日本臨床歯周病学会の歯周病とはによれば、「歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。」となっています。
しかし、厚生労働省のe-ヘルスネット・歯周疾患の症状・原因・進行によれば、「おもな歯周病原菌にはP.g.菌・A.a.菌・P.i.菌・B.f.菌・T.d.菌などが知られていますが、このほかにも数十種類もの細菌が歯周病との関連を疑われており、他の感染症のように1種類の細菌が感染して起こるようなものではないようです。」となっています。
また、日本歯周病学会の歯周病の原因によれば、「歯周病の原因として、細菌因子(歯と歯ぐきの境界をポケットと呼びますが、ポケット周辺やポケット内の細菌、プラーク)、環境因子(喫煙、ストレス、薬物等)、宿主因子(患者さん自身の体質、全身疾患等)が関係すると考えられています。」となっています。
上記に示すように、歯周病は、主に細菌の感染によって歯肉炎や歯周炎が生じ、放置すると歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちる病気というのが、歯科関係者の常識です。しかし、歯周病や歯周病原菌の正体やメカニズムは、まだ完全には解明されておらず、歯周病の治療法や治療薬は、現在も世界中で精力的に研究・開発が進められています。
例えば、2019年の日本歯周病学会60周年記念京都大会においては、「京都宣言-歯周病撲滅に向けて-」が採択されており、記念講演の中で日本歯科医学会の住友雅人会長は、「う蝕、歯周病の予防ワクチンや治療薬の開発は、歯科が医学・医療の体系としてスタートしたときからの研究テーマであり、ここにこそ全力を注がなければならない。」と述べています。
歯周病の予防ワクチンや治療薬を開発するためには、まずは歯周病の原因について、常識を疑ってみることが大切なのではないかと思います。前述にように、歯周病は、主に細菌の感染による炎症性疾患であるというのが定説ですが、感染症の原因は細菌だけではありません。感染症は、細菌の他に、寄生虫・真菌・ウイルス・異常プリオンなどでも生じる病気です。
こんなことを書くと、ベテランの歯科関係者は、「素人がバカなことを言っている。過去に抗真菌薬を歯周病の治療に利用して批判された事件を知らないのか?」と思うかもしれません。この事件については、2000年に日本歯周病学会が、ポジションペーパー「正しい歯周治療の普及をめざして-抗真菌剤の利用を批判する-」を発表し、「Candida albicans が歯周病の病原菌であるとの科学的根拠が希薄であり、歯周病病因論の観点からは抗真菌薬を歯周治療に利用することの妥当性は見いだせない。」との立場を示しています。
上記のポジションペーパーから、歯周病は、カンジタ菌などの真菌が原因である可能性は極めて低いことは理解できます。また、寄生虫が原因でないことは明らかです。しかし、細菌と共に多くの感染症の原因となるウイルスについては、十分な調査・研究が行われているとは言い難いのではないでしょうか?
歯周病における歯周組織破壊に関する免疫学的考察によれば、歯周病は、歯周病源細菌による慢性的な刺激によってサイトカイン・酵素による緩慢な免疫暴走が生じ、過剰な炎症反応によって付着の喪失・歯槽骨の吸収などの組織破壊が生じるのが特徴です。
しかし、ウイルスによる感染症でも、サイトカインによる免疫暴走によって過剰な炎症反応が生じることは良く知られています。例えば、現在も世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、感染者の何%かは重症肺炎となり、サイトカインストームによって致死的な急性呼吸促迫症候群(ARDS)となります。
私は、歯科には全くの素人ですが、歯周病は、本当に細菌が主因なのか?、ウイルスが関係していないのか?、もう一度最初から検討し直すことが、歯周病の新しい治療法・治療薬の開発に繋がると考えています。
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